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【岩国再生エネルギー 吉柴氏インタビュー前編】「EC事業譲渡を通じて主力事業に専念できる環境を整えることができた」岩国再生エネルギーのM&Aのきっかけ、forestへの譲渡までの軌跡

2023.06.20 m&a
forestへのブランド譲渡の裏には、どのようなやり取りや決断、ブランドオーナーの想いがあるのでしょうか。今回は、ペット用品販売事業をforestに譲渡した岩国再生エネルギー株式会社の代表 吉柴氏と、forestの代表 湯原伸悟の対談をお届けします。(以下、敬称略)


岩国再生エネルギーの創業経緯とEC販売事業について

湯原:
まずは岩国再生エネルギーの設立背景と、forestに譲渡されたペット用品販売事業についてご紹介いただけますか。

吉柴:
はい。弊社は私が「地域の資源を活かしていこう」と思って12年前に立ち上げた会社です。創業当初は、再生可能エネルギーの活用ということで、太陽光発電や地域にある木材をエネルギーとして使っていこうという発想からスタートしました。

ペット用品販売事業は、木質燃料の1つである木質ペレットを活用して始めた事業です。木質ペレットはペレットストーブの燃料として使用されてきたもので、全国いろんな方に買ってもらおうとインターネットでの販売を開始。そこから、ペット用のトイレ砂として利用される方が増え、ペット用品販売事業として進めてまいりました。


岩国再生エネルギーが販売する木質ペレット。
主に猫砂として個人向けに販売・利用されている。

湯原:
12年前に再生可能エネルギーに目を付けた理由は何だったんですか?

吉柴:
やはり1番は東日本大震災ですね。再生可能エネルギーがあまりにも力不足だなと感じまして。加えて、震災前から地域おこしへの想いも抱いていました。エネルギーを作り、製品として出荷できることが1番地域を元気にできる方法なんじゃないかと思いまして、エネルギーの地産地消を目指して起業しました。

変化する事業環境への対応策として「EC事業の譲渡」が浮上


湯原:
事業の譲渡に至るまでの変遷についても伺いたいです。

吉柴:
最初にYahoo!のページを作り、そこから割とすぐAmazonにも出店しました。今振り返るとYahoo!のページは何とも酷い状態だったなと思いますが、専門的な知識がないなかで試行錯誤を続けました。売上が出始めてからは楽天にも出店。その甲斐あって、それなりに商品を買ってもらえるようになってきたんですが、売上はあるものの利益をなかなか出せない状況でして。

ただ、利益を出すために何か手を打つことはなかったですね。日々の主力事業の業務で忙しかったですし、一方で商品価格を上げるのは、かえって売れなくなってしまうのではないかという恐れがあって踏み出せませんでした。このままだと多忙になるばかりでよくない、何とかしなければならないと思っていました。

EC事業の譲渡は漠然と頭にあった程度で、具体的な選択肢とまでは固まっていませんでしたね。正直初めはあまりよいイメージがなかったんですよ。ある程度売上が出始めたころから、いろいろなところから営業電話がかかってきていたこともありまして。率直にいうと「怪しい話だな」という印象でして、正しく必要性、選択肢としての妥当性を理解していなかったなと振り返ってみて思います。
forestさんから声をかけていただき、ようやく具体的に話が進み出したという感じで。

湯原:
我々はあるM&Aアドバイザリー企業から「こういった天然素材をECで販売している企業がいる。もしかしたら事業譲渡ができるかもしれない」と話をもらったのが最初でした。環境にも配慮した素晴らしい事業だなと感じ、役割分担を明確にして共に事業をすることができれば互いに成長できるのではないかと思いお声かけした次第です。我々の話に耳を傾けていただけた理由は何だったのでしょうか。

吉柴:
タイミングが大きかったですね。forestのお話をいただいた時期には、県内の競合他社が燃料配達事業から撤退するという情報があり、弊社の主力事業に注力しなければならなくなりそうだということが見え始めてきていたんです。主力事業に力を入れなければならないのに、インターネット通販も今までのように多忙な状況が続くとなると、キャパオーバーになるなと。いよいよどうにかしなければならないというタイミングでのご提案でした。

「一緒にやっていけそうだと感じられるかどうかが第一」forestへの譲渡の決め手


湯原:
お話を進め始めたときはちょうどコロナ禍だったこともあり、主にWeb上でお話を進めていきました。事業のご説明やM&A理由、初期段階での金額提示はすべてリモートで行いましたね。他の会社にもご相談はされていたのでしょうか。

吉柴:
金額提示まで進めたのはforestだけですね。多少の調整をお願いしましたが、基本的にそのまま契約まで進めていただきました。

金額も大切ではあるのですが、事業を進めていくとなると、その後もいろいろあることが予想できます。そうしたときに1番大事なのは、一緒にやっていけると思える相手かどうか。湯原さんたちなら一緒にやっていけそうだなと思えたので、実績や金額はそれほど重視しませんでした。

湯原:
私を含むメンバー数人で岩国に伺いました。1泊2日で会社の雰囲気を知ることができましたし、吉柴さんには木材の調達先の岡山や広島にも案内していただきましたね。コミュニケーションを深めるなかで、我々としても吉柴さんの事業の素晴らしさをあらためて感じ、信頼が置ける会社さんだという想いが強まりました。我々の印象はいかがでしたか?

吉柴:
「若い方たちだな」と思いましたね。湯原さんもですし、一緒に来られた方たちも同年代以下の方たちで、こうした若い方々と一緒にやっていくと考えることで事業の今後をイメージしやすかったです。forestが描いているビジョンにも共感できました。EC市場で単独で取り組んでいても消費者への認知を広げられないイメージがあったんですが、forestなら広げていけるのではないかという期待感もありました。

湯原:
M&Aの進め方に関してはいかがでしたか?

吉柴:
手続きに関してはそれほど難しいことはありませんでした。ただ、全社の株式譲渡とは異なり、一部事業の譲渡はECショップのアカウント譲渡が難しかったですね。

湯原:
今回はEC事業だけ子会社に切り出し、その株式を譲り受けるというプロセスを踏みました。事業譲渡をストレートにすると法律的に手続きが大変になるためです。子会社の設立含め、譲渡周りの手続きは弊社の司法書士と進め、できる限り吉柴さんにご負担をかけないよう尽力しました。

注力したい仕事に専念できるようになったのが事業譲渡の1番のメリット


湯原:
事業譲渡後のお話については、後ほどあらためてお伺いします。今回の譲渡の目的は本業に専念できるようにすることでしたが、そのあたりの進捗についてもあらためてお聞きしたいです。

吉柴:
ペット用品販売事業をお任せできたことで、得意としている物流の仕事に注力できるようになったのが大きいです。注力すべき状況になりそうだと思った燃料配達の事業に専念できるようになれたのが1番のメリットですね。燃料事業において1番重要なのは滞りなくお届けすることですから。

商品販売の事業は、戦略含めて時間を割かなければならない仕事が多いですし、緊急対応も発生します。そこを切り離し、燃料供給を滞りなくする仕事にシフトできたのが事業譲渡してよかったと思える理由です。

湯原:
ありがとうございます。コロナ禍を機に本業に加えてEC小売業を始めたメーカー主体の企業や、製造物流機能を持つメーカーなど、本業ではない部分で苦労している会社も多いのではないかと思っています。岩国再生エネルギーさんとの事例のような取り組みを今後も広げていきたいと考えています。


インタビューの後半では、事業譲渡後の関わり方についてお話を伺います。



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